× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 視界に映る全てのものが白く見えて、自らの吐き出す吐息さえ霞んで見えた。 頬に冷たく降りかかる白銀の粉は、依然降り止まず注ぐ。まるで自分の心に積もって積もっていくように… 手を伸ばしても誰も居ない世界で、諦めと絶望に身を委ねるつもりで瞳を閉じる。ズッシリと重く下りゆくそれが完全に閉じる前に、視界の隅で馬の姿を捕らえた気がした。 死者のように雪原に横たわる彼の腕が、ふいに力強く引き上げられる。驚いて見上げると、鋭い笑みを浮かべた男が、いた。笑っているのに、瞳は激しく怒っているようにも見えた。 「誰だ…」 「……」 尚も掴まれ続ける腕を睨みながら、男に叫ぶ。野党の類には思えず、困惑と疑心が心に渦巻く。 「いい加減離せ……このっ!!」 「死んでいるとばかり思っていたが、生きていたのか。」 ことり、と呟きを洩らす男の瞳が、笑った。悪寒を感じて必死に戒めから逃げようと腕をバタつかせるが、一行に掴まれたまま、握られた手首が痛む。 「し、死んで…」 「いると思ったのなら何故関わってきた?とでも言いたげな瞳だな。」 「なっ!?」 言わんとしていた言葉を続けられ、思わず言葉をなくす。そんな相手の様子も全く介せず、男は視線を向け続けている。 「…俺に何か用なのか?」 盗られて困るものなど一切持っていない。剥がす価値もない身ぐるみだという事くらい、一目見れば分かるくらい貧相な格好をしているのだ。大体、この男の身なりからして、野党の類ではありえない。 暫くの沈黙を置いて、ぽつりと男が口を開く。 「私は紅黎深。今日から、お前の養い親だ。」 「…………」 発せられた言葉が理解できなくて瞠目する。呼吸が途切れて、思わずむせ込んでしまう。 「冗談じゃない、他を当たってくれ。」 今度こそ、力を込めて腕の戒めを強引に解く。離れた手を摩りながら憮然と男を見る。 はっきりと拒絶の言葉を与えたのに、未だにそこに佇んでいる。何故だか笑顔さえ浮かべている始末だ。頭でも狂っているのではないかと疑い出したくなる。 「この私に拒否など出来るものか。さぁ、行こうか?」 「嫌だと言っているだろう!このっ…」 半ば引きづられるようにして、雪原にいた少年は突如現れた男に馬に乗せられて連れて行かれた。 それから黎深は適当な所に宿を取り、少年を強制的に湯浴みさせた。 かじかんだ手足がほぐれていくのをボーっとした頭で感じながら、少年は自分に与えられた名を思い浮かべる。 李絳攸。 誰からも必要とされなかった自分には、名前など記号に過ぎなかった。…そもそも、名前を呼ぶ者とてなかった。それが。 「これでちょっとはマシになったな、絳攸。」 奇妙な男だが妙に親しげに(?)呼ばれると、それが本来自分のもののように思えてくるから不思議なもので。 「俺がどんな格好をしていようがお前には関係ない」 黎深はフッと笑った。 「関係ならあるさ。養い子が貧相な格好をしていたら私まで無粋な人間に思われてしまうだろう?」 「気にするな。嫌がる人間を無理やり養い子にしている時点で無粋だ。」 「おや、養い子になったことを認めるのかい?」 「…別に…認めてなんか」 黎深は笑みを深くした。 「認めたくなくても、お前はここに居るしかない。どうせ行く当てもないのだろう?絳攸。お前の居場所はここにしかない。さっさと認めることだ。」 あきらめることだ、の間違いじゃないのか? 絳攸は呆れたように溜め息をつく。口ではどうあっても敵わない相手らしい。反論するだけ無駄だと悟った。 その夜、宿を訪ねて来る者があった。 明らかに身分の高い男と薄穢い身なりの子供との二人連れが来ていないか、付近の宿を聞き込みして回っているらしい。 店主は何も言わず首を横に振る。前金と口止め料を多めに支払ったのが功を奏したようだ。 「もう、追っ手が来ているのか。…少々まずいな」 絳攸が朝起きると黎深はもう起きていて、なにやら含んだ笑顔で近寄って来た。 「おはよう、絳攸。早速だけど、これに着替えて。」 「……ん?…何…」 寝惚け眼をごしごし擦って、黎深の差し出した衣装を見直す。 「……なっなんだこれは!こんなもの着れるかー!!」 黎深が手にしていたのは、女物の衣装が一着。 「身を隠すことは必要だろう?お前は追われているのだから。」 「…っ…何故」 「何故知っているかって?私はお前の父璃忲陽を知っているからね。尤も、お前は覚えてはいないのだろうね。早くに亡くなってしまったから」 「…父を…」 「璃忲千。それがお前の本当の名前だったな。忲陽から聞いたことがある」 忲千の父、忲陽は地方の役人だった。璃家は代々役人の職に就いてきた家系で、忲陽も役人として堅実に働いてきた。まあ、いろいろあって、黎深と友達になったけどまたなんかあって罪を被せられて死んだっつーことで。説明めんどくさいし。 「という訳で、着なさい。」 有無を言わさない笑顔で近づかれて、徐々に逃げ場をなくす。それでも尚、懸命に逃げ道を捜し視線をめぐらせながらも壁に追い詰められてゆく。 「絶対に嫌だ…!!大体、変装なら女の格好じゃなくてもいいだろうがっ!!」 自らの指し示す先にある、不必要にヒラヒラした装飾の服。女人の服にしても、それは『とても可愛らしい』部類に入るモノだった。何処からこんなもの仕入れてきたんだ… 「面白いからに決まっているだろう。何、心配はいらない。お前ならきっと似合うはずだ 絳攸?」 このあと女装大会に出て優勝するまでの色々を描いておくれー(笑
絳攸が黎深に拾われた時の話を友達と合作で考えてたんだけど、うっかり長い期間放置してたら原作で拾われ話が書かれちまったって話(笑 PR この記事にコメントする
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